- 麻薬取締官の年収はいくらなの?
- 麻薬取締官ってどんな仕事?
- 麻薬取締官の魅力を知りたい
国家公務員である、麻薬取締官(マトリ)は仕事の特性上、実態を詳しく知る人は多くありません。
本記事では、元マトリのB先輩から聞けた話をもとに、麻薬取締官の仕事内容や魅力について解説します。
守秘義務もあるから、全部は話せないけど、許してね!
- 麻薬取締官の年収・初任給
- 麻薬取締官の仕事内容・魅力
- 麻薬取締官になるための方法
コタロ
麻薬取締官の年収は低いのか?
麻薬取締官の給料は、俸給表をもとに支給されます。
俸給表とは、職位や等級・勤務年数などに基づいて、給与を支給するための一覧表のことです。
麻薬取締官は、行政職俸給表(一)が適用されます。
麻薬取締官の平均年収は約660万円
以下の表は、麻薬取締官の平均月収やボーナス、平均年収をまとめものです。
» 国家公務員給与等実態調査結果(外部リンク)
俸給 | 平均給与月額 | ボーナス | 平均年収 |
323,711円 | 404,015円 | 1,797,867円 | 6,646,047円 |
ここでは、ボーナス支給額=平均月収×4.45で算出しています。
薬剤師全体の平均年収は、約583万円です。
このデータを見る限り、麻薬取締官の年収は決して低い金額ではないのが分かります。
ただし、以下のイメージ図のように、上級職員が平均年収を底上げしている点に注意しましょう。
公務員の若手職員は年収が低く、金銭的な余裕は生まれにくいのが一般的です。
麻薬取締官の初任給は約19万円
人事院の報告によると、麻薬取締官(大卒)の初任給は190,400円です。
» 国家公務員給与等実態調査の結果(外部リンク)
ただし、これは行政職全体の初任給であり、麻薬取締官以外のデータも含まれています。
私が入職したのは10年ほど前でしたが、初任給は20万円くらいだったと思いますよ。
そのため、新卒薬剤師が麻薬取締官になった場合、地域手当や残業・住居手当などを加味すると、20万円程度と考えるのが妥当でしょう。
一方で、調剤薬局やドラッグストアで働く薬剤師の初任給は30万円前後が一般的です。
そのため、新卒薬剤師の年収で比較すると、麻薬取締官は劣ってしまいます。
この初任給の低さが、麻薬取締官の年収は低いと言われる最大の理由でしょう。
» 薬剤師の初任給はどれくらい?勤務先別で徹底解説(外部リンク)
配属される地域によっても年収は異なる
麻薬取締官は、地方厚生局の麻薬取締部へ所属するため、全国各地で働く可能性があり、以下のような手当てが給与以外に支給されます。
- 地域手当
- 時間外勤務手当
- 住居手当・単身赴任手当
- 通勤手当
これらの諸手当は、地域差があります。配属先によっては、数万円単位で給料が変わる場合があるのです。
民間企業だと、手当や福利厚生が充実していないところも多いので羨ましいですね~。
そう思うかもしれませんが、地域によっては本当に忙しいです…。
ですから、手当をあてにするのは、あまりおすすめしませんよ。
麻薬取締官の仕事内容
麻薬取締官のは、一般的な薬剤師とは異なる特殊な仕事に従事するのが最大の特徴です。
麻薬取締官の仕事は、非常に責任の重い、重要な任務を含んでいます。
麻薬犯罪の取り締まり
麻薬取締官の重要な仕事のひとつとして、麻薬犯罪の取り締まりがあげられます。
- 対象者や対象薬物の情報収集
- 張り込み調査
- 逮捕・取り調べ
これらの仕事は、地道で根気のいる仕事です。
なお、麻薬取締官には、警察官と同様に逮捕権があります。
麻薬や薬物犯罪の取り締まりでは、拳銃や手錠の使用が認められているのです。
逮捕訓練・制圧訓練など、医療従事者として働く薬剤師としては考えもつかないような仕事に取り組みます。
薬物乱用の防止活動
薬物の乱用防止活動も麻薬取締官の重要な仕事になります。
麻薬や覚せい剤などの違法薬物は、使いたくないのに使ってしまうほど、依存性の高い危険な薬です。
そのため、学校で薬物乱用防止の講演実施や、薬物乱用防止運動などに取り組みます。
私が参加した、ダメ・ゼッタイ運動は、この一環だったんだね。
このほか、薬物依存症で困っている人に対する支援にも取り組んでいます。
» 再乱用防止|厚生労働省 麻薬取締部(外部リンク)
薬物乱用から抜け出し、社会復帰を目指す方にとっても、麻薬取締官の取り組みは欠かせません。
医療用麻薬の監視・指導
麻薬取締官は、医療用麻薬・覚せい剤原料・向精神薬などの適正使用にも貢献しています。
- 取り扱い者の免許制度
- 流通ルートの適正化
免許制度の導入により、医療用麻薬の動きが特定でき、不正流出を防ぐことが可能になりました。
場合によっては、麻薬取扱者に対する指導監督するケースもあります。
一般市民が安易に麻薬と接触することがないよう、不正ルートへの流出・防止には細心の注意を払っているのです。
» 指導と監督|厚生労働省 麻薬取締部(外部リンク)
麻薬取締官の魅力を聞いてみた
B先輩から、マトリの魅力について聞き出しました。
いま思い返すと、本当に良い経験を積めたと思います。
魅力①:プライドを持って仕事に取り組める
麻薬取締官の仕事内容で解説したように、一般的な薬剤師とは異なる、特殊な仕事に取り組むのが麻薬取締官です。
麻薬犯罪の取り締まりや薬物乱用の防止活動・医療用麻薬の指導監督など、公衆衛生を守るためには欠かせません。
だからこそ、麻薬取締官は自分の仕事に大して誇りを持っているのです。
捜査部門で働きましたが、強い使命感を持って働けたと思います。
麻薬取締官は、直接的に社会の安全と健康に寄与するため、強い社会貢献を実感できる仕事といえるでしょう。
魅力②:チームワークが試される
麻薬取締官の仕事は、チームワークが重要です。
特に、麻薬犯罪の取り締まりでは、チームを組んで捜査活動に取り組みます。
捜査活動や摘発作業は、個人の力だけではなく、チーム全体の協力が不可欠だからです。
自分勝手に仕事を進めると、捜査失敗につながったり、仲間を危険な目に合わせたりするリスクも生じます。
お互いの考えが合わず、衝突することもありました。
そうなんですか…!
でも、本気で仕事に取り組んでいるってことですよね。
このように、麻薬犯罪の取り締まりはチームワークが重要であり、メンバー同士の信頼関係が捜査成功の鍵となります。
一人ひとりが高い使命感を持って、仕事に臨むことは簡単ではありません。
だからこそ、麻薬取締官は魅力ある、やりがいを感じられる職業といえるでしょう。
魅力③:多くの経験が積める
麻薬取締部では、人事交流を行っています。
» 研修制度/人事交流について|厚生労働省 麻薬取締部(外部リンク)
地方厚生局はもちろん、警視庁・警察庁・財務省税関など、さまざまな出向先で多くの経験が積めるのが魅力です。
警察庁や警視庁で働くなんて知りませんでした。
B先輩は、A県の薬務課へ出向したんですよね。
マネーロンダリングに関する調査や、税関での麻薬密輸の取り締まりに携わる先輩もいましたよ。
麻薬取締官としての目線だけでなく、さまざまな業種を経験することで、幅広い価値観を持てる人材として成長できるでしょう。
麻薬取締官になるための方法は?
麻薬取締官になるには、国家公務員採用一般職試験(大卒程度)または、薬学系選考採用試験のどちらかを受けなければなりません。
B先輩がマトリとして採用されるまでの流れも聞けたので、ぜひ参考にしてください!
国家公務員採用一般職試験(大卒程度)
麻薬取締官は国家公務員なので、公務員試験を受けなければなりません。
ただし、薬剤師は例外で、薬学系選考採用試験を合格すると麻薬取締官として採用されます。
薬剤師でない方が麻薬取締官を目指す場合、以下の流れでの受験が必要です。
まずは、麻薬取締官の職務内容について、情報収集するところからはじめてください。
人事院と厚生労働省が協力し、業務説明会などを開催しています。
» 業務説明会|麻薬取締部(外部リンク)
一般的に、2月上旬に受験案内が公表され、2月下旬~3月下旬にかけて第1次試験の受験申込が行われます。
» 国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)|人事院(外部リンク)
なお、インターネットからでなければ受験申込はできませんのでご注意ください。
1次試験の内容は以下の通りです。
- 基礎能力試験
- 専門試験
- 一般論文試験
1次試験合格者に対して、官庁訪問が実施されます。
志望官庁を訪問し、面接や業務説明を受ける機会のことです。
自己PRするチャンスであり、採用内定を受けるためには欠かせません。
» 採用情報|人事院(外部リンク)
官庁訪問は、2次試験とほぼ同時期に行われます。
官庁訪問で内々定・内定もらわなければ、2次試験を合格しても採用とはなりません。
官庁訪問の日程は、地域ごとに異なるため、麻薬取締部公式HPを定期的に確認しましょう。
»応募及び採用に関する情報|麻薬取締部(外部リンク)
2次試験では、人物試験と題して、人事院による個別面接が行われます。
面接カードの内容をもとに、受験者の回答を掘り下げ、人間性・将来性を見極められる面接方法です。(コンピテンシー評価型面接)
面接カードの記入内容の一例を、以下に記載しました。
【基本情報】
(試験区分、受験番号、受験地、氏名、最終学歴、職歴)
【志望官庁等】
(3つまで)
【卒論(修論)テーマ】
【語学・資格】
【クラブ活動・アルバイト歴】
【趣味、特技など】
【長所・短所】
【身体】
【学生時代に力を入れたこと(学業)】
【学生時代に力を入れたこと(学業以外)】
【自己PR】長所や人柄について
【当委員会の志望理由】
【採用されたらやってみたい業務】
官庁訪問による内々定・第2次試験の最終合格、このどちらも満たすことで、麻薬取締官として採用されます。
薬学系選考採用試験
薬学系選考採用試験とは、以下の条件を満たした場合に受けられる麻薬取締官の採用試験のことです。
薬剤師免許の取得者または薬剤師国家試験の合格見込み者でなければ受験できません。
採用試験は、一次試験・最終試験の2回にわたって行われます。
全国各地の麻薬取締部にて実施されます。
実施期間は地域によって変わるため、ご注意ください。
試験は、以下の3つが行われます。
1.論文試験
指定する課題について考えを述べるもの
(30分・400字程度)
2.適性試験
マークシート方式
(制限時間2時間程度)
3.面接試験
10分~20分程度
(論文と適性検査終了後、指定の日時で実施)
一次試験の合格発表は、試験実施から2週間以内に行われます。
一次試験合格者に対して、関東信越厚生局麻薬取締部にて行われます。
1.面接試験
20分~30分程度
1週間以内に合格発表がありますので、最終試験の結果発表を待ちましょう。
私はこちらの試験を受けてマトリになりました。
まとめ
今回は、元マトリのB先輩から、麻薬取締官時代のお話を聞かせていただきました。
- 麻薬取締官の収入事情
- 仕事内容
- 麻薬取締官の魅力
公務員である以上、初任給は低いものの、経験年数を重ねるごとに確実に収入アップは見込めます。
麻薬犯罪の取り締まりや医療用麻薬の流通管理など、公共衛生を守るためにも、麻薬取締官の存在は欠かせません。
自分たちの仕事に誇りをもって働いていることが知れました。
今回はありがとうございます。
こちらこそありがとうございました。
マトリを知ってもらえる機会になれたら幸いです。