「薬剤師に将来性がない」と耳にする機会が増えています。しかし、職場や役割によっては、多くの可能性があるのが薬剤師です。この記事では、薬剤師の現状と将来性、キャリアを高める方法を解説します。記事を読むと、薬剤師としての価値を高められます。
薬剤師に将来性がないと言われる理由
薬剤師に将来性がないと言われる理由は以下のとおりです。
- 薬剤師の需要と供給の現状
- AIやIT技術の進化
薬剤師の需要と供給の現状
薬剤師の需要と供給の現状は以下のとおりです。
- 薬剤師の供給過多により就職市場が激化している
- ドラッグストアの増加により薬剤師需要がピークに達している
- 病院薬剤師だとキャリアアップが困難である
- 薬価改定と経営環境の悪化により雇用が不安定化している
複数の要因が重なり、薬剤師に将来性がないと言われています。
AIやIT技術の進化
AIやIT技術の進化が、薬剤師には将来性がないと言われる理由の1つです。以下の理由から、必要な薬剤師の数が減少し、患者と対面する重要性が低下すると考えられています。
- 自動調剤機の普及
- AIによる薬剤管理の普及
- インターネット薬局の増加
- オンライン診療の普及
【職場別】薬剤師の将来性
薬剤師の将来性について、以下の職場ごとに解説します。
- 調剤薬局
- ドラッグストア
- 病院薬剤師
- 製薬会社
調剤薬局
高齢化社会の進行に伴い、今後も需要が増えると考えられているのが調剤薬局です。調剤薬局は地域住民にとって身近な存在であり、信頼できる薬剤師が欠かせません。需要が増える調剤薬局において、薬剤師は以下の業務を求められます。
- 処方箋に基づく薬の調剤と提供
- 健康管理のアドバイスや指導
- 法規制や薬事法に準じた業務
- 患者の服薬アドヒアランスの向上
- 薬の在庫管理や発注業務
- 医療機関との連携
ドラッグストア
ドラッグストアは薬剤師にとって将来性のある職場です。理由は以下のとおりです。
- 全国に多くの店舗があり、需要が安定している
- セルフメディケーションの進行により相談やサポートの需要が増える
- 医薬品だけでなく、日用品や化粧品など幅広く取り扱う
- 常駐薬剤師による健康相談や医薬品の説明に需要がある
- 高齢者向けの商品やサービスへの需要がある
- 地域密着型サービスの展開が求められている
ドラッグストアで働くことで、幅広い経験を得られ、多角的なスキルを身に付けられます。今後も需要が見込まれるのが、ドラッグストアの薬剤師です。
» ドラッグストア薬剤師の平均年収とメリット・デメリット
病院薬剤師
医療の高度化とともに治療において重要な役割を担うことから、病院薬剤師の将来性は高まっています。医療チームの一員として、病院薬剤師に求められる役割は以下のとおりです。
- 抗がん剤の調整
- 患者ごとの投薬計画の作成
- 患者の遺伝情報を元にした投薬の最適化
- 医師や看護師との連携による治療計画の立案と実施
医療の進歩とともに、病院薬剤師の役割は拡大し、多くの患者にとって不可欠な存在となることが予想されます。
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製薬会社
新薬や新しい治療法の開発は今後も需要があるため、製薬会社における薬剤師には将来性が期待できます。製薬会社での薬剤師の業務は多岐にわたり、社会的な意義と、幅広い分野で活躍できるのが魅力です。以下の仕事が製薬会社での薬剤師の役割です。
- 新薬の研究・開発
- 臨床試験や薬の効果・副作用の検証
- 製造プロセスの監督と品質管理
- 薬事法に基づく許認可取得や申請業務
- 市場調査とマーケティング戦略の策定
- 医療機関や薬局への情報提供と営業活動
- 海外展開やグローバル戦略の推進
- 企業や大学との共同研究プロジェクトの実施
薬剤師の将来的な役割
医療の進化とともに、薬剤師の将来的な役割も多岐にわたることが予想されます。薬剤師の将来的な役割について、以下の3つを解説します。
- かかりつけ薬剤師
- セルフメディケーションの推進
- オンライン診療とリフィル処方箋の導入
かかりつけ薬剤師
医療の質を向上させるために、重要性が増していくことが予想されるのが、かかりつけ薬剤師です。かかりつけ薬剤師は患者と直接対話することで、以下のような個別のサポートを提供します。
- 服薬指導により副作用リスクを軽減
- 医師と連携して患者の病歴やアレルギー情報を把握
- 定期的な健康相談や服薬指導
- 生活習慣改善の支援
かかりつけ薬剤師のサポートにより患者はより健康的な生活を送れます。医療の質を向上させるためにも、かかりつけ薬剤師の存在は重要です。
セルフメディケーションの推進
医療費の抑制と医療リソースの有効活用のために、セルフメディケーションが推進されています。セルフメディケーションとは、一人一人が自分の健康を管理するための取り組みです。セルフメディケーションでは、市販薬の適正使用に関する啓発が欠かせません。
セルフメディケーションの推進において、薬剤師は以下の役割を求められます。
- 市販薬の適切な選択と使用方法の指導
- 予防医療の一環としての健康相談
- 市販薬に関する知識の提供とサポート
- 自己診断ツールや健康アプリの利用促進
- 定期的な健康チェックとフォローアップの実施
- 地域社会での健康イベントやワークショップの開催
上記のような取り組みにより、一人一人が自分の健康をより良く管理し、健康的な生活を送れるようになります。セルフメディケーションの推進において、重要な役割を果たすのが薬剤師です。
オンライン診療とリフィル処方箋の導入
オンライン診療の普及とリフィル処方箋の導入により、薬剤師の需要が増える可能性があります。オンライン診療により、患者は自宅から医師の診察を受けられます。遠隔地に住む人や高齢者、多忙な患者にとって、オンライン診療はとても有用です。
薬剤師は以下のような影響を受けると予想されます。
- 業務量の増加により薬剤師の需要が増す
- 医師との連携の重要性が増す
- 患者の診療サポートや薬の提供における役割が拡大される
- 新たな技術やシステムに対する適応能力が求められる
リフィル処方箋が導入されれば、患者は一定期間内に同じ薬を再度受けとれるので、通院の回数が減少します。患者の利便性の向上だけでなく、医療業界全体の効率化にも貢献するのが、オンライン診療の普及とリフィル処方箋の導入です。
薬剤師としての将来性を高める方法
薬剤師としての将来性を高める方法として、以下を解説します。
- 認定薬剤師になる
- 管理薬剤師になる
- かかりつけ薬剤師になる
- 研究・開発職へ進む
- 在宅医療のスキルを身に付ける
- 外国語を習得する
認定薬剤師になる
薬剤師としての将来性を高める方法の1つが、認定薬剤師になることです。認定薬剤師とは、特定の専門分野で高度な知識と技術を持つ薬剤師です。認定薬剤師を取得すると専門性が高まり、キャリアの幅が広がります。認定薬剤師の種類としては、以下のようなものがあります。
- がん専門
- 感染制御専門
- 緩和ケア専門
資格を取得するには、専門的な研修や教育プログラムの修了が必要です。認定薬剤師の資格取得により、評価や信頼度が高まり、転職や昇進で有利になります。資格取得後も定期的な更新や研修への参加が求められるため、常に最新の知識と技術を習得しないといけません。
管理薬剤師になる
管理薬剤師になることで、薬剤師としての将来性を高められます。薬局全体の運営やスタッフの管理、業務の効率化を図る役割を持つのが管理薬剤師です。管理薬剤師として成功するためにはマネジメントスキルが欠かせません。管理薬剤師には以下の業務が求められます。
- 部下やスタッフの育成
- 業務効率化の提案
- 上司や部下との円滑なコミュニケーション
管理薬剤師としての役割を果たし、薬局全体の成功に寄与すれば、薬剤師としての将来性を高められます。
かかりつけ薬剤師になる
薬剤師としての将来性を高める方法の1つが、かかりつけ薬剤師になることです。かかりつけ薬剤師は、以下の取り組みをします。
- 地域の健康イベントへの参加と情報提供
- 定期的な患者のフォローアップ
- 患者のライフスタイルに合わせた服薬指導
- 他分野の医療スタッフとの協力による包括的なケアの提供
かかりつけ薬剤師として成功するためには、以下のスキルや行動が必要です。
- 患者と信頼関係を築くためにコミュニケーションスキル
- 最新の医薬品や治療法についての継続的な学習
- 地域の医療機関や他の薬剤師との連携
かかりつけ薬剤師の役割を果たすことで、患者から信頼を得て、地域社会へ貢献できれば、薬剤師としての将来性を高められます。
研究・開発職へ進む
薬剤師としての将来性を高める方法として、研究・開発職へ進む方法があります。所属する研究開発部門によっては、高い年収やポジションを獲得することが可能です。研究・開発職では、新薬の開発や臨床試験の設計と実施、データ解析などを担当します。主な職場としては、以下のとおりです。
- 製薬会社
- 大学
- 研究機関
研究・開発職の魅力は、医学や薬学の進歩に直接貢献できることです。新たな医薬品や治療法を発見することで、多くの患者の命を救えるようになります。高度な専門知識とスキルが求められますが、達成感が大きいのも魅力です。
研究・開発職として成功するためには、以下のスキルや能力が求められます。
- 最新の研究動向を常にキャッチアップするための英語力
- キャリアアップに有利な博士号(PhD)
- チームでの協働
- プロジェクト管理スキル
在宅医療のスキルを身に付ける
在宅医療のスキルを身に付けることで、薬剤師としての将来性を大きく高められます。高齢化社会が進む中で、在宅医療の需要が高まっているのが理由です。高齢化社会では、在宅医療に精通した薬剤師は重要な役割を担います。在宅医療に特化した薬剤師になるためには、以下のスキルや経験が必要です。
- 在宅医療の基本知識
- 高齢者や慢性疾患患者の薬剤管理
- 訪問薬剤管理指導の経験
- 他職種との連携
- 最新の情報や研究の継続的な学習
- 患者や家族と信頼関係を築くコミュニケーション能力
在宅医療のスキルを身に付け、地域医療ネットワークに参加することで、薬剤師としての将来性を高められます。
外国語を習得する
薬剤師としての将来性を高める方法の1つが、外国語を習得することです。外国語を習得すると、薬剤師としての専門性と市場価値が大きく向上します。メリットは以下のとおりです。
- グローバルな医療環境でのコミュニケーション能力向上
- 海外の最新医療情報や文献の理解
- 外国人患者への対応力の向上
- 海外勤務や海外研修の機会
- 医療ツーリズムの分野での需要
- 国際的な学会やセミナーへの参加
- 医薬品の輸出入業務に対応
- 外資系製薬会社でのキャリアアップ
- 多言語の薬剤情報提供によるサービス向上
薬剤師のキャリア計画の立て方
薬剤師のキャリア計画の立て方として、以下の2つを解説します。
- 自己分析とキャリア目標の設定
- キャリアアドバイザーの活用
自己分析とキャリア目標の設定
キャリア計画を立てるためには、自己分析とキャリア目標の設定が必要です。自分の興味や関心、強みを理解すると、自分が追求したいことが明確になります。過去の経験や実績を振り返り、自分のスキルを確認して、今後必要になるスキルを洗い出しましょう。
自己分析を踏まえて、理想のキャリア像を設定しましょう。キャリア像には具体的な職種や役職だけでなく、働き方やライフスタイルを含めることが重要です。理想のキャリア像を設定することでモチベーションが高まり、行動に一貫性を持たせられます。
以下のように、期間ごとのキャリア目標を設定し、やるべきことを明確にしましょう。
- 短期:1年以内に達成する目標
- 中期:3~5年後に達成する目標
- 長期:10年以上先に達成する目標
キャリア目標を設定したあとは、定期的に進捗を確認し、必要であれば目標の見直しと調整を行ないましょう。状況の変化や自分の成長に応じて、柔軟な対応することが重要です。メンターや上司、同僚からフィードバックを受ければ、より客観的な視点を得られます。
キャリアアドバイザーの活用
キャリア計画を立てる上で、キャリアアドバイザーの活用はとても効果的です。キャリアアドバイザーは業界の最新情報やトレンドに詳しく、自分に合ったキャリアパスを提案してくれます。キャリアアドバイザーから受けられる主なサポートは、以下のとおりです。
- 履歴書や職務経歴書の作成サポート
- 面接対策
- ネットワーキング機会の提供
- 職場環境や条件についての情報提供
- 転職市場の動向についての情報提供
- キャリアプランの見直しや修正のサポート
- 自己分析のサポート
- 内定後のフォローアップ
まとめ
職場や役割ごとの変化を理解し、適切なスキルを身に付ければ、薬剤師としての将来性を高められます。将来性を高める具体的な方法として、以下を解説しました。
- 認定薬剤師になる
- 管理薬剤師になる
- かかりつけ薬剤師になる
- 研究・開発職に進む
- 在宅医療のスキルを身に付ける
- 外国語を習得する
薬剤師としての将来性を高めるためにも、自己分析とキャリア目標の設定が重要です。キャリアアドバイザーを活用して具体的なキャリア計画を立てましょう。薬剤師としての将来性を確保するためには、変化に適応し続ける努力が求められます。
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