臨床開発モニター(CRA)とは、新薬開発の臨床試験(治験)に欠かせない、重要な職業のひとつです。
ですが、CRAと接する機会は少なく、具体的にどのような仕事をしているのか知らない方は多いのではないでしょうか。
恥ずかしい話、CRAのことをほとんど知りませんでした…。
そこで、今回は元CRAのaikoさんからお話を伺い、仕事内容・CRAになる方法・収入事情まで詳しく教えてもらいました。
よろしくお願いします!
- CRAの仕事内容
- CRAのなり方・収入事情
- CRAの魅力や大変なところ
CRAとは
まずは、臨床開発モニター(CRA)に関する基本的なことについて教えてもらいました。
CRAってどんな仕事?
CRA(Clinical Research Associate)の主な仕事は、開発途中の新薬が、医薬品として承認されるまでに必要な事務手続きのサポートです。
具体的には、以下のような仕事をしています。
- 治験をするための事前準備
- 医療機関などのスケジュール管理
- 治験薬のモニタリング・報告書の作成
被験者や医療従事者はもちろん、国を含めた多くの人たちが関わるため、これらを一元管理するCRAの役割は非常に重要です。
CRAを目指したきっかけを教えてください
きっかけは、大学生のときにボランティアで訪れたインドのマザーテレサ施設です。
日本では、当たり前のように病院で治療を受け、薬を処方してもらえますよね。
ですが、インドでは医療を受けられることは、当たり前では無かったのです。
この現状を目の当たりにし、もっと世の中の薬や治療が潤沢になれば救える命が増えるのではないかと考え、薬の開発に関わりたいと思いました。
なるほど…。
自分たちが恵まれていることに気づかないものですね。
CROやCRCとの違いは?
CRAと医薬品開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)、治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)はまったく異なります。
下の図は、CRA・CRO・CRCそれぞれのイメージ図です。
CROとは、製薬会社から治験業務を委託する企業のことであり、CRAは製薬会社またはCROのいずれかに就いて業務に従事します。
一方、CRCとは、医療機関に勤める、治験スタッフのことです。
治験責任医師などの指示を受け、医療機関側の業務全般を担当しています。
CRAの仕事内容について
CRAについて理解が深まりました!
では、CRAの仕事内容について、もう少し詳しく教えてください。
仕事内容①~治験開始前~
治験開始前の仕事は、3段階に分けられます。
対象疾患の患者数や治験薬の保管環境、治験経験・実績などを確認します。
私の経験上ですが、製薬会社が選定作業行い、契約からCROに委託するケースが一般的でした。
選定調査の後、適格と判断された医療機関と契約を締結します。CRAの出番ですね。
製薬会社の用意したプロトコル(計画書)を元に、医療機関に対して治験内容・スケジュールを説明します。
医療機関との契約が結ばれると、治験薬の搬入や被験者の登録など、治験を行う環境づくりを行います。
仕事内容②~治験実施中~
治験実施中の主な仕事は、以下の2つです。この仕事が、CRAで最も重要な仕事になります。
治験中の医療機関へ訪問し、計画書や法令を遵守して行われているかどうか、副作用の有無等を医師やCRCへヒアリングします。
医療機関で確認した内容をモニタリング報告書としてまとめます。
これで、1回の外勤業務が完了になる流れです。
治験が終了するまで、モニタリング業務・報告書の作成を繰り返さなければなりません。
治験期間によっては、何年も同じ治験を担当するCRAもいました。
仕事内容③~治験終了時~
アフターフォロー期間も含め、すべての被験者の治験が終了したらり、手続きを進めて業務終了となります。
万が一、書類などの不備が見つかった場合、すべての問題を解決しなければなりません。
CRAの魅力とやりがいについて
aikoさんの経験を通して感じた、CRAの魅力ややりがいなどを教えてください。
CRAの魅力は?
一番の魅力は、新薬の開発に最前線で携われることです。
未承認の薬が、患者さんに効いている情報を聞くと、とても嬉しいですし安堵しますね。
しかし、効果が思うように出なかったり、想定外の副作用が出てしまったりする症例もゼロではありません。
このような結果を聞くと、患者さんはもちろんだと思いますが、企業側としてもつらく残念な気持ちになります。
どのような結果になったとしても、CRAとしてのモニタリング業務に責任を持ち、最後まで担当することが重要です。
CRAのやりがいは?
やりがいはいくつかありましたが、担当した新薬が承認された瞬間は嬉しいですね。
無事に承認が下り、医薬品として認められると、CRAとして携われたことに誇らしさを感じます。
また、新薬だけでなく、既存薬の適応が追加されたときもやりがいを感じます。
新たな適応の追加に貢献できたときは、頑張って良かったなと私自身は思いました。
適応が増えれば、治療の選択肢も増えますからね。
CRAはとても重要な役割です。
CRAになるには?どんな資格・スキルが必要?
CRAとして働くために必要な資格はありません。
ただし、CRAを募集している製薬会社またはCROに就職する必要があります。
私の場合、CROに就職してCRAとして働いていました。
クライアントである製薬会社に出向というかたちで出社する人もいましたね。その後、出向先の製薬会社へ転職する人もいました。
正直、製薬会社へ就職したい人は、CROからの転職が就職しやすいと思います。
また、CRAとして働くなら医師はもちろん、看護師・薬剤師などの医療従事者と話せなければなりません。
カルテを閲覧することもあるため、疾患や医療用語の知識は必要ですね。
また、コミュニケーション能力が高いほど円滑に業務が進められます。
ですが、これらのスキルは、仕事をしていくうちに自然と身についていきましたね。
CRAの収入事情や大変なところ
最後に、CRAの収入事情やCRAの大変なところを教えてください。
CRAの年収はいくら?
CRAの相場年収と薬剤師の年収について、以下の表にまとめました。
年収 | ||||
---|---|---|---|---|
年代 | 20~29歳 | 30~39歳 | 40~49歳 | 50歳~ |
CRA | 521万円 | 628万円 | 788万円 | 849万円 |
薬剤師 | 423万円 | 586万円 | 636万円 | 608万円 |
※CRA(臨床開発モニター)の給与・年収(外部リンク)
表を見ても分かるように、CRAの給与水準は高い傾向にあります。
ただし、経験年数・管理職によっても変わるので、個人差の大きい職種といえますね。
出張による外勤手当なども出るため、諸手当が給料を底上げしている要因のひとつだと思います。
CRAの仕事はつらい?転職理由は?
治験開始前の繁忙期は、つらいと感じるタイミングのひとつですね。
締め切りなどに追われることが増えるので、業務過多になるケースは少なくありません。
基本的には、ひとりで複数の施設を担当するため、繫忙期はCRAにとって大変な時期です。
また、グローバル試験を担当する場合、時差が生じてしまいます。
そのため、夕方以降から業務に入る場合もあり、労働時間が長くなってしまうこともありますね。
ほかには、患者さんの体調が良くなるのを直接見られないところです。
繫忙期を乗り越え、無事に新薬の承認が下りたとしても、患者さんの喜ぶ姿は見れません。
そのため、達成感よりも疲労感の方が強く、もどかしい気持ちになることもありました。
精神的な余裕も無くなり、「何のために誰のために仕事をしているんだろうか…」と考え込んでしまい、転職することを決めました。
真面目すぎる性格の方だと、繁忙期で精神的に追い詰められてしまうかもしれません。
プライベートとの両立は難しい?
個人的には、仕事とプライベートの両立はしやすい職業だと思います。
外勤日時を自分で決められるのは良かったですね。
外勤先のご当地グルメを堪能したり、観光してから帰ったりもできました。
自分のペースでスケジュール調整ができるので、海外旅行や平日に有給休暇も取ることも可能です。
まとめ
今回は、元CRAのaikoさんから、お話を聞かせてもらいました。
- CRAとは?
- CRAの仕事内容
- CRAの給料事情
- CRAのやりがい
あまり聞きなれない職業でしたが、新薬開発に携われる、やりがいを感じられるような仕事だと分かりました。
特別な資格は必要なく、社内研修もあるため、誰でも挑戦できる職種です。
CRAを職業選択肢のひとつにしてもらえたら嬉しいです。