病院って忙しいのに、薬局よりも給料が低いのはなぜ?
一般的に、病院は非営利組織のため、給与が上がりにくい特徴があります。
ですが、専門資格の取得やキャリアアップ・転職などで年収を上げることは可能です。
本記事では、ほかの薬剤師や医療職との年収の違いを徹底比較します。
- 病院薬剤師の年収の実態
- 年収アップの具体的な方法
病院薬剤師の年収と他との比較
病院薬剤師の年収は、他の薬剤師職種と比較すると低いです。病院薬剤師の年収と他との比較について、以下の3つを解説します。
- 病院薬剤師の平均年収
- 他の医療職との比較
- 他の薬剤師の職種と比較
病院薬剤師の平均年収
病院薬剤師の平均年収は、約450〜550万円です。他の職種と比較すると、安定した収入です。病院薬剤師の年収は、経験年数に応じて上昇します。資格や役職、地域によっても、年収には差があります。
他の医療職との比較
他の医療職との比較は、以下のとおりです。
- 医師:病院薬剤師よりも高い年収
- 看護師:病院薬剤師よりもやや低い年収
- 理学療法士や作業療法士:病院薬剤師よりも少し低い年収
- 医療事務:病院薬剤師よりもかなり低い年収
- 医療技師(放射線技師、臨床検査技師):病院薬剤師とほぼ同等かやや低い年収
病院薬剤師の年収は、他の医療職と比べて中程度であることがわかります。給与面では医師には及びませんが、看護師や医療事務よりは高い位置にあります。
他の薬剤師の職種と比較
他の薬剤師の職種と比べて、病院薬剤師の年収は低い傾向にあることが特徴です。理由として、病院薬剤師は臨床現場での専門知識を活かす一方で、給与面での評価が低いからです。調剤薬局の薬剤師やドラッグストアの薬剤師は、病院薬剤師よりも高い年収を得る傾向にあります。
ドラッグストアの薬剤師は、夜間勤務や休日勤務が多いため手当が充実し、年収が高くなります。製薬会社で働く薬剤師は研究や開発に携わることが多く、年収が高めです。企業内薬剤師も福利厚生が充実しており、年収に加えて待遇面でも優れています。
一方、病院薬剤師は勤務時間が不規則で、オンコール対応がある場合もあります。キャリアアップによって年収が上がる可能性はありますが、他の職種に比べて昇給幅が小さいです。給与面では、他の薬剤師の職種に劣りますが、専門知識を活かして臨床現場で活躍できる点は魅力です。
【年齢・役職・地域別】病院薬剤師の年収
病院薬剤師の年収は、年齢や役職、地域によって大きく異なります。年齢・役職・地域別病院薬剤師の年収について、以下の3つを解説します。
- 年齢別の年収推移
- 役職別の年収
- 勤務地域別の年収差
年齢別の年収推移
年齢による病院薬剤師の年収の変化を理解することは、キャリアプランを立てる上で重要です。病院薬剤師の年齢別の年収推移は、以下のとおりです。
- 20代前半:300〜400万円
- 20代後半:400〜450万円
- 30代前半:450〜500万円
- 30代後半:500〜550万円
- 40代前半:550〜600万円
- 40代後半:600〜650万円
- 50代前半:650〜700万円
- 50代後半:700〜750万円
病院薬剤師の年収は、年齢とともに着実に増加します。経験を積むと、より高い収入を得ることが可能です。
役職別の年収
役職によって、病院薬剤師の年収は異なります。新人薬剤師の年収は約350万円ですが、経験を積むとさらに高収入を目指せます。病院薬剤師の役職別の年収は、以下のとおりです。
- 一般薬剤師:約450万円
- チーフ薬剤師:約550万円
- 副主任薬剤師:約600万円
- 主任薬剤師:約650万円
- 副薬局長:約700万円
- 薬局長:約800万円
役職が上がると、リーダーシップやマネジメントのスキルが求められ、報酬も増加します。主任薬剤師や薬局長は、薬局全体の運営やスタッフの管理も担当するため、高い年収に設定されています。
勤務地域別の年収差
勤務地域による年収差は大きく、都市部では年収が高いです。東京や大阪などの大都市圏では、医療需要が高く、病院の規模も大きいことから、年収も比較的高めです。しかし生活費が高いため、実質的な手取りが少ない場合もあります。
一方、地方都市では年収が低い傾向にあります。人口が少ない地域では医療需要も限られるため、病院の経営状況によっては年収が低めに設定されることが多いです。ただし、地方の病院でも人材不足が深刻な場合には、年収は高めに設定されています。
地域ごとの生活環境や病院の規模、医療需要などが年収差に影響しています。転職やキャリアアップの参考にしましょう。
【職場別】病院薬剤師の年収
病院薬剤師の年収は、働く場所によって大きく異なります。転職や就職を考える際には、職場別の情報を参考にすることが重要です。
国立病院の年収
国立病院の薬剤師の年収は安定しており、平均年収は約450〜550万円です。初任給は約20〜25万円の範囲で、経験年数や役職に応じて昇給があります。夜勤手当や残業手当が含まれており、賞与は年2回、約4か月分が支給されます。地域差もあり、都市部では年収が高めな点も魅力です。
国立病院機構に属するため、給与規定が厳密に設定されており、福利厚生も充実しています。年金制度や退職金制度も整備されているので、長期的な視点で見ても安定した収入が期待できる点もメリットです。勤続年数が長いと昇給幅が大きくなる場合もあり、収入増加が見込める制度が整備されています。
公立病院の年収
公立病院の薬剤師の平均年収は、約500〜600万円です。年収は地域や経験年数によって異なりますが、都市部より地方の公立病院の方が年収が低い傾向にあります。都市部の方が生活費が高く、給与も高く設定されることが多いからです。
公立病院では勤続年数が長いほど昇給が見込まれるため、長期的に働くと年収が増える可能性があります。特定の資格を取得したり役職に就いたりして、年収を増加させることも可能です。民間病院に比べて福利厚生が充実しているので、安定した職場環境を求める方にはおすすめです。
ボーナスが年に2回支給される場合が多く、年収を押し上げる一因となります。
民間病院の年収
民間病院の薬剤師の年収は、おおむね500〜600万円程度です。病院の規模や地域によって異なるため、注意が必要です。大都市圏の病院では、年収がやや高めになる傾向がありますが、小規模な病院や地方の病院では低い場合が多いです。
年収の昇給ペースは緩やかであり、ボーナスや手当も他の医療職と比べると少ないことは考慮すべきです。夜勤や休日出勤がある場合には手当がつくことがあり、年収の一部を補える可能性があります。勤続年数が長くなるほど年収は安定しやすく、役職が上がれば年収も増加する傾向があります。
ただし、福利厚生が充実している病院があるものの、年収に大きく影響することは少ないです。民間病院での薬剤師の年収には、大都市圏での勤務や役職の昇進、勤続年数の長さなどが影響します。
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病院薬剤師の年収が低い理由
病院薬剤師の年収が低い理由には、以下のような要因があります。
- 病院は非営利のため給与が上がりにくい
- 人件費削減の影響がある
病院薬剤師の年収が低い理由には、さまざまな影響が複合的に絡み合っています。
病院は非営利のため給与が上がりにくい
病院は利益を追求しない非営利組織です。利益を再投資に回す必要があり、職員の給与に充てる予算が限られています。病院の収入源は、主に診療報酬や公的資金に依存しており、診療報酬の改定によって収入が変動しやすいという特徴があります。
職員の給与体系が公務員に準じる場合が多く、昇給やボーナスの幅が限られることが多いです。
人件費削減の影響がある
人件費削減の影響があるため、病院薬剤師の年収は上がりにくい状況にあります。病院は非営利組織のため、利益を人件費に回しにくい構造です。労働生産性の向上が求められ、1人当たりの業務負担が増加することも少なくありません。
さまざまな要因が重なり、病院薬剤師の年収は他の職種や業界と比較して低くなる傾向があります。
病院薬剤師の年収を上げる方法
病院薬剤師の年収を上げる方法は、以下のとおりです。
- 専門資格を取得する
- キャリアアップを目指す
- 国公立病院に転職する
- 地方の病院に転職する
専門資格を取得する
専門資格の取得で、病院薬剤師の年収を大幅に上げられます。資格が専門性を証明し、職場での評価を高めるためです。具体的には、以下の資格が年収アップに効果的です。
- がん専門薬剤師
- 感染制御専門薬剤師
- 糖尿病療養指導士
- 緩和薬物療法認定薬剤師
病院薬剤師としての専門性を高めることで、職場での評価が上がり、結果として年収も増える場合が多いです。資格取得を通じて、自分のスキルを向上させることが、年収アップの有効な方法になります。
キャリアアップを目指す
キャリアアップを目指すには、以下の方法が有効です。
- 専門薬剤師の資格取得
- 管理職やリーダー職への昇進
- 大学病院や総合病院への転職
- 臨床研究や学会発表の経験を積む
- 継続的な学習や研修への参加
- 薬剤部門の経営スキルの習得
- 国際的な認定資格の取得
- 他部門との連携強化やプロジェクト参加
上記の方法を取り入れることで、キャリアアップが期待でき、さらなる成長と発展が見込めます。
国公立病院に転職する
国公立病院への転職には多くのメリットがあります。国公立病院に転職すると安定した雇用環境と充実した福利厚生が受けられるため、病院薬剤師のキャリアにおいて有利です。国公立病院では公務員としての待遇が受けられるため、給与や手当が充実しています。
扶養手当や住居手当のほか研修制度も整っているため、スキルアップがしやすい点もメリットになります。定年後の再雇用制度がある場合も多く、長期的なキャリアプランを描きやすいです。国公立病院では高度な医療機器を使用する機会が多く、最新の医療技術に触れられます。
労働組合があるため、労働条件の改善も期待できます。
地方の病院に転職する
地方の病院に転職するメリットは、以下のとおりです。
- 人材不足のため高待遇が期待できる
- 住居手当や引越し補助がある場合が多い
- 地域医療への貢献度が高くやりがいがある
- 患者との距離が近く、アットホームな職場環境である
- 生活コストが低く、実質的な収入増加が見込める
- 地方の特性に合わせた専門知識が身につく
- 医師や看護師との連携が密で成長機会が多い
- 地域限定の奨学金返済支援制度が利用できる場合がある
メリットの多い地方病院への転職はおすすめです。
» 薬剤師で年収1,000万を超えの職場と給与を上げる方法を解説!
病院薬剤師のやりがいと将来性
病院薬剤師のやりがいと将来性について、以下の3点を解説します。
- 臨床医療に貢献できる
- チーム医療の一員として働ける
- 専門性が高まりキャリアの幅が広がる
病院薬剤師は、やりがいと将来性が十分にある職種だとわかります。
臨床医療に貢献できる
臨床医療に直接貢献できるのが、病院薬剤師の魅力です。患者の治療計画にも関与し、医師と協力して最適な薬剤療法を提供できます。最先端の薬物治療の知識を活かして、効果的な治療も行えます。新しい治療法や薬剤に関する情報を常にアップデートし、臨床現場で実践することで、最適な治療が可能です。
臨床研究に参加すれば、新しい治療法の開発にも携われます。病院薬剤師としての役割は多岐にわたりますが、やりがいも大きく、臨床医療に大きな貢献ができることは間違いありません。
チーム医療の一員として働ける
チーム医療の一員として働く病院薬剤師の役割は重要です。病院薬剤師は、医師や看護師、他の医療スタッフと連携して患者の治療に貢献します。チーム医療では多職種が協力して患者ケアを行うため、薬剤師の専門知識が欠かせません。
薬剤師は薬の選定や投与計画において助言を行い、緊急時や複雑な症例でも迅速に対応します。病院内の薬剤管理システムの一環として機能し、患者の安全を守る役割も担います。患者や患者の家族との直接的なコミュニケーションも重要です。治療方針や薬の説明をわかりやすく伝えることで安心感を提供できます。
病院薬剤師は、チーム医療の中で多くの役割を果たし、患者ケアの質の向上に貢献します。
専門性が高まりキャリアの幅が広がる
キャリアの幅が広がる理由は、専門知識が向上するからです。専門知識が深まることで、信頼性が増し、多くの患者や医療スタッフから頼りにされる存在になります。後輩の育成やチームのリーダーシップを担い、組織全体の質の向上にも貢献できます。
海外での研修や勤務のチャンスも増え、新しい治療法や薬剤の開発に携わることも可能です。特定の分野でのエキスパートとして認められ、さらなるキャリアアップが期待できます。
まとめ
病院薬剤師の年収は、他の薬剤師職種や医療職種と比較して低い傾向にあるのが特徴です。年齢や役職、勤務地、国立や公立、民間病院によって、年収に違いがあります。専門資格の取得やキャリアアップ、国公立病院や地方病院への転職などが年収を上げる方法です。
病院薬剤師は、臨床医療やチーム医療に貢献できるため、やりがいと将来性が十分にあります。
» 薬剤師で年収1,000万を超えの職場と給与を上げる方法を解説!